2010-03-31

占星の時代 (Astrology Age)

begin

ユダヤに伝わる話に、こんなものがあるという。

王とラビは友人だった。が、ユダヤ人を公式に擁護できない王は、ユダヤの民の指導者であるラビと大まっぴらに話すことができなかった。

あるとき、王は手紙を託した使者をラビに送った。相談がある。王位についている間にやりたいことが二つ。一つは貿易の自由化。もうひとつはかわいい息子に王位を継がせること。だが、政治の力学から、王である私ですら為しうる大きな決断・政策は、あと一つが限界だと思える。どちらを優先すべきだと思う ?

ラビから王に手紙をしたためるワケにはいかない。証拠が政敵の手に渡らないとも限らない。使者は手ぶらで帰り、伝言も託されなかった。

王は問うた。ラビは私の手紙を読んだあと、何をしたのか、と。

あの異教徒は読み終わると返事もせずに家に入り、出てきたときには自分の子供を連れていました。自分は口もきかず、子供を肩車すると、肩の上で子供がさよならの挨拶をして追い返されたのです。(なんて無礼なやつ)

しばらくして王は退位。意中の息子が後を継ぎ、新王が貿易を自由化したという。

main

占星術もこれに似ているのではないか、と先日思った。

宮廷お抱えになったというのに、まだこんな下町にきて、占星研究家どうしの付き合いをしてくれるのか。ありがたいねぇ。うん、いつもご馳走になります

……そうだねぇ。最近は西からきたジプシーが、こんな説を教えてくれたよ。火星が天蝎宮に入るとき、力を増すに違いない

それは面白いな。どこから西のどの辺りから来たって ?

さぁ、あいつら適当だから。森の向こうの A**** 城下あたりは通ってきたようだが

( A*** の向こうでサソリの紋章をもつといえば、C*** だな。あそこのお抱え占星学者 D*** は優秀だ。もっともらしい学説を作るのはお手のものだろう。さて、火星がその位置に入るのはいつかな。帰って調べねば)

このあと、別の学説をたてて政略結婚の意図があることが街の噂を経て D*** に伝わり、D*** がそれとなく城主の息子を誘導して色気づかせ、時間稼ぎをする。

何度かのやりとりの結果、戦火はなく民衆も幸せに暮らし、貴族や兵隊も戦争で疲弊せずに済んだ。

なんてね。星で時期を示し、学説・解釈という形でメッセージを送れば、王に助言する占星学者のあいだで密かなメッセージが送れ、水面下で交渉も和平もなっただろうという想像だ。あるいは、交渉ではなくスパイと主だったかもしれない。暗喩による暗号。

end

それは占星学、占星術に失礼だ、冒涜だ。真摯な学者が解釈を恣意で歪めるはずがない、て ?

曲学阿世は曲世阿学よりマシだ。本当に大切な自分の仕事がなにか分かっていれば、宮廷お付きの占星学者・兼・相談役が、ほかに採る道はないだろう。それ位に目端が利かなくて、お抱えの地位にも上がれないだろう。

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